温かい彼の話

 

彼と言うのは、私の甥っ子で、弟の息子だ。

 

彼は、もうアラサーだ。

自閉症だけれど、訳あって関西で逞しく一人暮らしをしている。

 

2〜3歳の時に自閉症と診断され、小学生の時に親子で

私達を頼って近所に引っ越して来た。

 

楽しかった。

彼は夕食の後、自作の歌と踊りでショーをした。

灯りが大好きで、

パースとかチップスアホイとか造語も色々あった。

主人は、なぜかブラックと呼ばれた。

 

 

でも、その暮らしも訳あって、数年後終わってしまった。

 

 

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彼は、その後の20年近くの波瀾万丈の人生を、本当に強く生きた。

強く生きることを、自ら選んだ。

 

 

彼は、毎年 年末年始を、私達の家で過ごすことに決めている。

私達の年末年始は、

すなわち主人の実家に、主人の兄弟が集まって新年を祝

うことになり、

そこに私の甥っ子、嫁の甥っ子を混ぜて頂くことにる。

 

みんな温かい。何気ないけど、本当に温かい。

姑は、年末の時点で「カズマくんには、2人分用意しないとね」と。

いつもおせちや、しゃぶしゃぶを、リスのように口いっ

ぱい溜め込むスタイルの、彼の食いっぷりを微笑ましく

見てくれる。

 

各地から実家に帰ってくる兄弟(私には義理の)達も、

イマイチ空気を読めず、ハイテンションになってしまう

彼に

「ヨウ!」と、ただそれだけだ。優しい人達だ。

 

 

彼が30歳になるまで、支援者の皆さんに助けて頂きなが

らも、一人で、どれだけ頑張っているか。

 

コンビニで水一本買うのでも、つい不要な動作してしまう。

人の多いところでは、耳栓をしないと集中が切れてしまう。

 

彼の後ろ姿に、つい胸が熱くなる。

温かい子だ。

 

今彼は、3年連続全国技能オリンピックに出場している。

優勝するまで頑張ると言っている。

 

そして、毎年私の孫に、誕生日プレゼントと手紙を送っ

てくれる。

一生懸命選んでいる姿を想像すると微笑ましい。

 

 

私はあなたに励まされるばかり。

生まれてくれて、ありがとう。