姉、犬を飼う
姉は2つ上。
高校の国語の教師をしていた。
テニス部の熱血顧問でもあった。
60歳で定年を迎え3年目だ。
何かと思うところもあるだろう。
親の介護や、自分たちの老後や。
そこにコロナで、可愛くて素直で頭が良くて
性格も良くて足も長い妹も押しかけて来れない。
歳をとると、姉妹は良い理解者同士。若い頃より。
そこで、かどうか、犬を飼うことにしたそうだ。
昨日ブリーダーさんから、早速動画が送られて来た
とラインで見せてくれた。
夫婦して、目に入れても痛くないくらい可愛がる様が
目に浮かぶ。
愛する、誰かを守るという力は、強い。底力だ。
幼児の時の写真記憶だけど。
母と私達4人兄弟で、東京で電車に乗るところ。
母は弟を背負い、兄と一緒に泊まっている電車に乗り込む。
私と姉は手を繋いで、3人の後を行く。
が、階段を登り切ったところで、発車のベルが鳴り出して
しまう。
母は死ぬほど焦っただろう、瞬間目の横に、
電車を止めんばかりに必死の形相で、ドアを押さえて
娘二人の名前を叫ぶ母の顔を見た。
昨日は、おじいさんの自転車転倒事故に何も出来ずに
落ち込んだ。
そういえば、子育ての頃はどこにでも、駆け込めたよなぁ。
夜に熱を出した。
砂利道で走って転んで膝をかぱっと切った。
関節が外れた。
理不尽な担任の態度が許せず、
低血圧で朝が苦手にもかかわらず
ノーメイク、ボサボサ頭で
朝の職員室に文句を言いに行ったことも。
姉のところの可愛いわんちゃんを見て
愛の強さを思い出した、そんな今日。
姉も、薄ぼんやりとした閉塞感から
きっと抜け出せると確信して
嬉しかった。