親と子と
親と子の人間模様の舞台と言えば蕎麦屋だ!
ったと思う。
『一杯のかけそば』ブームは1988年だったらしい。
私にも『一杯のかけそば』時代があった。
***
当時子育て中で、収入は主人の稼ぎだけだった。
買い物の時は、予算内で買えてるか
レジ前で確認する程慎重にしていた。
経済的に余裕はなかった。
ある夜、やむを得ず私と子ども2人、
3人で外食をすることになった。
主人がいないので、私は緊張していた。
安く済ませるように、ラーメン屋さんに行ったのに
幼児の娘が、ラーメンにメンマをトッピングすると言う。
(ちょっと待ってよ、メンマっていくらよー)
と心の焦りの半分だけを、娘に向けて
「ちゃんと食べれるの」と言って注文した。
山盛りにもられたトッピングメンマは
到底幼児の手に負えるものではなく
相当のメンマ好きのためのようだった。
以来このメンマ事件は、メンマで母が幼児の娘に
激怒した事実とともに我が家の語り草となる。
一緒に居ながら、母の激怒を事前に防げなかった後悔が
長男として、息子の心に刻まれたのか
その後大人になっても、3人で外食する時の兄は
妹の注文にナーバスだった。
美味しそうによく食うのが取り柄の娘。
ラーメン屋さん再び。
「私、ラーメンと麻婆どうふとエビチリと、、、、」
間髪入れない
「お前、ラーメンセットにしとけ」
との兄の言葉にピシャッと遮られる。
***
久しく行ってなかった、そのラーメン屋さんに
何年振りかで主人と行った。
主人はご機嫌で、『1人生チュウ&餃子祭り』だ。
「小さい頃は2人とも可愛かったなー。
ヤツ(長男)の巣立ちを感じたのは2回。
1回目は、中3のサッカーの夏大会の後。
俺とヤツと2人だけで昼飯食いながら
一つ終わってしまった、とあいつが涙を流した時。
もう1回は、(大学、進学の時)
東京のアパートにあいつを置いて帰った時。」
私達の車を見送る息子の姿を
涙でかすむ目で
サイドミラーで見えなくなるまで目に焼き付けた。
私は号泣し、高速道路に乗り
東京を離れても泣いていた。
実は主人も泣いていたのだろうか。
親と子。
お互い大切な存在だからこそ、行き違うこともあるだろう。
親であり、子である前に
それぞれ1人の人間だから
大切な人に対して、どうしたいのか、人それぞれ違うから。
私も、親との関係に大いに悩んだ人間の1人だ。
でも、よくも悪くも、「両親が居たから今の自分がある」
子ども達にも、そう言ってもらえるだけで、苦労が報われる。